ローズ・オニールの広告 "JELL-O"編
"キューピー"の生みの親で、アメリカの女性漫画家の草分け。イラストレーターで画家、彫刻家、作家でもあり、婦人参政権運動の活動家でもあったローズ・オニール(Rose O’Neill, 1874-1944)。
一時は世界一裕福な女性イラストレーターと言われるほど売れっ子だった彼女は、様々な企業の広告も手がけました。
中でも有名なのは、ゼリーの素"Jell-O"の広告。彼女のイラストは雑誌などの広告だけでなく、メーカーが無料配布していたレシピブックにも使用され、それらの冊子は今では人気の紙モノ(ephemera)として売買されています。
ローズ・オニールがキューピーを正式にキャラクターとして“Good Housekeeping”誌で発表したのが1909年。JELL-Oの広告を描き始めた時期とも重なっているため、レシピブックにもキューピーが登場、可愛らしい姿で大活躍しています。
1908年
1909年
1911年
1912年
Jell-Oの広告にキューピーが登場したのは1915年
1915~1916年
雑誌の広告はページ1面を使用したものもありましたが、このように1/4、1/2スペースのものも多かったようです。
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【1915年に制作されたレシピブック】
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レシピブックは十数ページの小さなブックレットで、広告の下部に記されている通り、住所と名前を書いて手紙で申し込めば無料で送付されました。
創業当時はなかなか知名度が上がらなかったJell-Oは、このレシピ集の無料配布で全国に知られるようになったといいます。最初は全国各地に派遣されたセールスマンが直接配っていたそう。
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【同じくローズ・オニールが手がけたブックレット】
発行年不詳
これも第1刷は1915年としているところもありますが、エフェメラとして売買されているものの多くが1920年代に印刷されたものであり、キューピーコラボのものより、こちらのほうが長期にわたって版を重ねていたようです。
ちなみに表紙の少女は“Jell-O Girl”といって、ローズ・オニールが広告を描くようになる前からのJell-Oのイメージキャラクター。
服装や髪型が同じなので、本文中の少女も“Jell-O Girl”として描かれているもよう。
“Jell-O Girl”のママは“Mrs. Jell-O”
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ここに紹介した2種類のレシピブックが発行される前にも、ローズ・オニールのイラストを使用したレシピブックがあったようで、その全ページがDigital Repositories at Duke 及び Wikimediaで参照できます(PDFでダウンロードも可)。
こちらで使用されているイラストは、本人がレシピブック用に描きおろしたものではなく、それまでの広告に使用されたものをトレスして各ページに配置しています。
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1917年の“Ladies Home Journal”誌に掲載された広告。この頃から、従来型のモノクロ広告に加え、カラーのものが増えていきます。
1919年
1919年
1919年
以前モノクロで描いたイラストを新たにカラーで描いているものも多い。
1920年
1920年
ローズ・オニールがいつまでJELL-Oの広告を手がけていたのか、正確に確認することは出来ませんでしたが、1920年代になると、今までに描いたものは使用され続けているものの新しいイラストはあまり見られません。
ローズ・オニールは1920年代の前半はパリで暮らしており、おそらくその辺りで手を離れているのではないでしょうか。
ノーマン・ロックウェルやマックスフィールド・パリッシュなど、Jell-Oの広告を描いた有名イラストレーターはほかにもいますが、ローズ・オニールの場合、カラフルなゼリーの素で作る素敵なおやつというイメージにぴったり。
ブックレットは今も人気ですが、このような販促用の小冊子が百年以上経っても沢山残っている(おそらくその可愛さゆえに大切にとってあった人が沢山いた)ことも頷けます。
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